家電書・第一章「吉田拓郎と洗濯機」・第一話「二人で買った緑のシャツを‥‥」

 

ギター吉田拓郎の「結婚しようよ」を最初に聴いたのは三十数年前のことと思う。レコードになる前に彼自身の弾き語りを聴いて、深夜に鳥肌がたったのを憶えている。
当時、ラジオの深夜放送は今の携帯メールのように、一部の中学生達のとても大切なメディアだった。そして、ギターを抱えてオリジナルを歌うフォークシンガー達は、青春のシンボルだった。
その第一人者ともいえる彼が、自らをメジャーに押し上げた作品のテーマは皮肉にも、誰かが人生の墓場とまで例えた、究極の青春引退宣言「結婚」だった。
この曲について語り始めたらきりがないほど音楽的には勿論、結婚観にまで、実に大きな影響を受けた。特にサビのメロディラインは‥‥。
などと話していると本当にきりがないので、音楽の話しはまた機会を改めて。今日は何とか洗濯の話しまでは持っていきたい。

「二人で買った緑のシャツを、僕のお家のベランダに並べて干そう‥」というサビのくだりは、その歌詞の中で唯一、所帯じみた家事の場面を想起させる。
洗濯である。
「私達一緒に暮らし始めたんですよ」と声高に宣言する代わりに、ペアのシャツを自分の家のベランダに、近所の誰もが嫌でも見える位置に、堂々と掲げるのだ。戦国武将の旗印のように。この場合、洗濯物は狼煙と同じでコミュニケーションの手段と言えなくもない。差詰め「サブメディア」というところだろうか。

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