家電書・第一章「吉田拓郎と洗濯機」・第三話 主婦業界に世紀のパラダイムシフト‥‥

 

 いや、むしろ当然のことながら世の社交的な主婦達の方が、よっぽどその恩恵に預かっている。洗濯機のお陰で主婦が毎日やるべき洗濯作業のメインは、洗うことから、干すことに移行した。干す作業は楽しかったし、自由な時間は画期的に増えた。

母の肖像  無理を承知で例えると、あたかも戦後日本の高度成長期からバブル崩壊を経て、デフレスパイラルの渦に巻き込まれていった日本の製造業が採るべき道、少品種多量の時代から、多品種少量の時代、生販一体化、ダイレクトマーケティングへと一足飛びに進化させてしまう様なことを、家事の世界で「洗濯機」はやってのけたのではないだろうか。
 洗濯機は家事の最も過酷な部分を担った。それからは「とにかく洗わなくっちゃ」と、じっと堪え忍ぶ主婦はいなくなり、「今日も頑張って干すぞー」的ノリの主婦が増えたのだろう。母の世代の話しである。
 製造業の例えに戻らせてもらうと、「とにかく作らなくっちゃ」から「売れそうな物を見つけて、作って、売りたい」にしなければ生き残れないこれからの製造業の世界にとっての救世主「洗濯機」は、まさしく「インターネット」であると思う。やれデジタルだの、IT革命だのと、もっと大仰にパラダイムシフトだのと「インターネット」が取り沙汰される昨今だが、半世紀も前に現れた「電器洗濯機」は、とっくの昔にパラダイムシフトを巻き起こしているのだ。家電パワー恐るべしである。

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